コラム

視聴率先生の劇場型授業~大阪高等学校・北村恭崇先生~(1)
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Writer S

その授業はまるで、計算されつくされた劇団の公演を見ているようでした。

ここは、大阪学園大阪高校。
阪急相川駅のそば、道を挟んで別の高校も隣接しています。 同校は、最近の少子化による学校経営難と言われる中において、ここ数年で父兄・生徒の絶大な支持を集め、生徒数を一気に3倍に増やしました。
「とにかく生徒の注意を引き付けて、一瞬で1時間が終わってしまう講義をする素晴らしい先生がいるんですよ」 半年ほど前に訪問させていただいた小社社員が、帰社後、熱っぽく語ったことを受け、今回取材陣が勇みおうかがいした次第です。

大阪高等学校・北村恭崇先生

大阪高校・北村先生の授業でまず、何より特筆すべきは、そのオリジナルの授業構成です。1単位50分の授業は、大きく分けて4部から構成されています。

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この4つの柱のもと、ストップウォッチで計りながら、できるだけ多くの生徒を次々に指名し、その答えに応じて瞬時に先生が解説を加えていくのです。その解説は、言葉だけではなく、重要な部分に線を引かせるなど、必ず生徒に作業を伴わせています。
多くの生徒への、発問・返答のキャッチボールはまさに秒間隔。瞬間に論理的な説明をちりばめる先生の言葉に、全生徒が集中して耳を傾けています。
しかし、そこに冷たい緊張はありません。さながらクイズ番組にチャレンジするような能動的な緊張感とでも申しましょうか、生徒からはフランクな質問がポンポンと飛び出し、先生も当意即妙に答えを返していらっしゃいました。

今回の匠は北村恭崇先生。すらっとした体躯から、明るさとバイタリティがにじみ出ている先生で、さぞ人気があるのだろうなと思いましたが、授業後のインタビューでは、ある劇団の公演に出演されたこともあるとのこと。なるほど!

また、インタビューには多くの先生に加わっていただき、さながら座談会の様相を呈しました。パワフルな岩本副校長、理想に燃えた山本教頭先生、そして各担任の先生の話しぶりから、人を引きつける明るさと、経営視点を超えた本当に生徒を思いやる気持ち、そして情熱が伝わってきました。

活力にあふれた学校。

「こんな学校に来るなら、毎日楽しいでしょうね」
生徒数を3倍に増やすって一体どんな学校運営をしているのだろうと、取材前に話し合った疑問がすっと解けた帰り道でした。

授業展開

何はさておき、早速クラスをのぞいて見ましょう。
北村先生はまず、約1000字の評論文が書かれたオリジナルプリントを全員に配り、一斉に各段落の重要な個所にそれぞれラインを引かせていきます。そして4分経過後、ぴたりと手を止めさせ、各段落の要点について、一人ずつテンポよく、多くの生徒を当てて聞いていくのです。

北村先生

北村先生

……ということを第四段落は言っています。さて次、これまでの繰り返しになりますが、第五段落はどう考えよう?先ほどと一緒だからA君。

……

生徒Aさん

生徒Aさん

北村先生

北村先生

5、4、3、2……

「自然プラス人工物」である、という新しい「文明」の理念が、どうしても必要となる、と。

生徒Aさん

生徒Aさん

驚きのカウントダウン。
これには集中せざるを得ないでしょう。
北村先生は、「“しかし”がありますね。逆三角形、ついていますか」「“例えば”にカッコがついていますか」等と、文章構造を見分けるポイントに、従来の指導通りマークが徹底されているか確認を取りながら、各段落の要点を生徒の答えから導きだし、最後はそれら要点をまとめ、文全体の要約を板書していきます。

北村先生

北村先生

第一段落に線を引っ張ってもらったところが、結局、そのまま何回も形を変えて繰り返されているわけです。主張は形を変えて繰り返されるということを、これまで『論理エンジン』を通して話をしていますね。……一番最初に主張を持ってきて、最後にもう一度まとめるという構文になっています。続いて語句に行きます。

続いて語句に行きます???(動揺する取材班)

あのマシンガンのような文章読解の直後に、息もつかさぬ語彙テスト。テスト後、2分半の間に、8人の生徒を次々と立たせ、ランダムに指定した語句の説明をさせていきます。

北村先生

北村先生

はい、じゃあ、始めますね。そうしたら、B君。はい、立って。
(生徒が立つ)
はい、3番。

回避。さけること。

生徒Bさん

生徒Bさん

北村先生

北村先生

はい、OK。はい、C君。
(生徒が立つ)
はい、6番。

含蓄。含み持つこと。

生徒Cさん

生徒Cさん

北村先生

北村先生

はい、OK。はい、Dさん。
(生徒が立つ・・・)

見つめる記者も「次は自分が指されるのでは?」と、とてもじゃないが、のんびり構えていられません。

北村先生

北村先生

そうしたら、次、行きますよ。論理エンジンを開いてください。

読解→語彙→論理エンジンと、数分単位で目先が変わります。生徒は集中力を保ちながら、論理エンジンにスッと入っていきました。
「相対的」の説明では、自分の身長とクラスの男子2名の身長を引き合いに出したり、手元にある文房具で「具体と抽象」の説明をするなど、身近なたとえにより、難解な用語のイメージもつかみやすかったことでしょう。
もちろん北村先生のことです。解説の中でも、「他にイコールの関係になるのは何がありましたか? 何個か挙げましたよ。」と、派生した質問を生徒にポンポンあてていくので、決して油断ができません。
予習段階で生徒からテキストを一旦提出させることにより、多かった間違いに目を配り、それについての解説を厚くする効率の良さも、印象に残りました。

『論理エンジン』の解説が終わると、すぐさまレベルクリアテスト。当然、時間制限付き。そしてタイムアップの声とともに、北村先生は、すぐに赤鉛筆に持ち替えさせ、解説に入っていったのです。

次回に続きます・・・

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