加藤 構造化とは、例えば「一段落は、単独で存在している」とか、あるいは、一段落の下に、二段落と三段落があって、その2つの段落はイコールの関係になっている、というように押さえることです。
まずはこの文章を4つに分けてみましょう。4つに分けるとすると、最初のグループにはどの段落が入って、2つ目にはどの段落が入って、3つ目4つ目にはそれぞれどの段落が入るのか、それを決めてください。その上で、それぞれ入った複数段落が、どういう相互関係になっているのかを考えて、構造化していただきたい。
加藤 さあ、ちょっと行き詰っているかな。
論理エンジンを持っている子は、OS3を出して。OS3のレベル27。持ってない子は、机をくっつけて隣の子に見せてもらってもいいですよ。懐かしいですね。
そのレベル27を見ていくと、……ちゃんとやってあるじゃない。
ここでは、「段落の相互関係」を勉強しました。前半では、例えば2つの形式段落間の相互関係がどのようになっているか――例えば一段落目の具体例が二段落目に書いてある、というような関係を勉強したはずなんです。
そして、ステップ5あたりになると、今度は形式段落が3つ――つまり、AとBという形ではなく、A、B、Cと3つになり、例えば一段落目と二段落目がセットになって、それに対して三段落目がどういう関係になっているか、というようなことを勉強しました。
そしてだんだん、その相互関係が複雑になりました。例えば、因果関係で一段落目と二段落目が結ばれているパターン、あるいはイコールの関係であるとか、対比のパターンであるということを勉強してきたのです。
例えばステップ4、これは対比の関係になっている。その理由はなぜかというと、後半の二段落目のてっぺんに「しかし」が載っているから。こういうのはすごく分かりやすいでしょう。
ということは、この二つの段落の関係を考える時には、二段落目のてっぺんの言葉がうんと大事になってくる。そんなことを勉強してきたはずです。
次に、レベル28を開けてみてください。レベル28からは、文章の要旨をとらえる勉強をしていきました。
それではステップ1を開けてごらん。比較的長めの文章の後半部分に、括弧でくくられているところがあり、その中で筆者が言いたいことは何ですか? という出題がされている。
これは論理エンジンですので、長文ではなく、形式段落は4つしかありません。しかも段落構造で言うと、4つの段落のうちの中心段落のヒントがもう出ています。「ここが中心段落に成り得ますよ」という風に括弧でくくってあって、「この中からポイントとなるのはどれですか?」というように。
論理エンジンのOS3ですから、君たちはきっと正解にたどり着けたと思います。その時、教えてくれた先生も言ったはずですが、ここで学ぶべきは、設問を解いて正解に至ることではなく、文章全体を読解するにあたっては、要旨の確認をして全体の構造化が出来ないといけないということなんです。
よく言うように、センター試験で本文を読んでいる時間は、せいぜい4、5分しかありません。その4、5分で、一読しながら構造化しなければならない。
その際、例えば「段落サイズ」より一つ下の「文のサイズ」から理解していこうとしたら、絶対に時間が足りなくなる。だから少なくとも、段落ごとに押さえていくという発想が必要なわけです。
で、その段落ごとに押さえていく時のポイントは、中心段落を見つけていくことだから、それぞれの形式段落の構造がどうなっているかを意識して読んでいきましょう、ということなんです。その練習が、このOS3のレベル28に、もう出てきていたんですね。ステップ1ではヒントが与えられた上で、文の中心は何ですか?という内容だったでしょう。
今回やっているこの実戦形式では、10個の形式段落がある。この中から中心段落を見つけて、要旨をとりたいわけです。
これは、設問を解くこととは違います。違うけれども、君たちはセンター試験だけを受けるわけではないから、たとえば記述解答を作るためには、言うまでもなく読解の結果として要旨をきちんと捉えられてなくてはならない。
で、その要旨を捉えようとした時に、この10個の形式段落がどういう構造になっているのかが見切れないと困るわけです。
今、5、6分でやってもらったのですが、その時、レベル27やレベル28で勉強したことが、生きていましたか。それが生きてなかったとすると、実は去年、一昨年と勉強してきたことが、ほとんど時間の無駄になってしまうのです。
さて、段落の相互関係を見る時には、全体を見るのではなくて、まず二つの形式段落から始めたわけでしょう。第一段落と第二段落はどういう関係になっているのかを考えて、例えばこれがセットにできるのであれば、これらは括弧でくくれてしまう。
するとその次に三段落がくるわけだから、じゃあこの三段落と、第一第二段落との関係はどうなのかな、と考える。
「これもやっぱり同じグループに入れられる」と考えるかもしれないし、「これはイコールの関係だ」、あるいは、「これは対立関係だ」と考えるかもしれないね。そういう風に一つ一つ段落を増やしていった結果、「ここが中心だ」という段落がわかる。
ちょっと遠回りになるんだけれども、まだ6月も始まったばかり。問題に正解することに焦りすぎてしまうと、最後で力が伸びなくなるから、もう一回OS3に戻っても構わないので、これを的確にやっていくということです。よろしい?
まさに論理エンジンと入試問題を直結させた、実戦的な講義です。大切なのは、論理エンジンのポイントを押さえ、習熟していることが、入試の正答に直結することを示していること。この踏み込みは加藤先生の論理エンジン授業の要でもあります。これがあってこそ、生徒の高いモチベーションが支えられているのでしょう。
さて、段落構造化の答えを導くために最後に見せていただいた加藤メソッド――それは何とグループワークでした。4人ほどで構成される小グループにクラスを班分けし、段落の構造について、自由に討議させるのです。
無駄な雑談もなく、イキイキとテーマに沿った発言を重ねる生徒たち。驚くほどの積極性に感心しつつ、残念ながらここで授業時間が終了となってしまいました。
授業後の先生のインタビューでは、論理エンジンをグループワークで解く意味について深く伺えましたので、ご期待ください。
(【後編】第2回に続きます・・・)