コラム

視聴率先生の劇場型授業~大阪高等学校・北村恭崇先生~(3)
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Writer S

今回も前回に引き続き大阪高校・北村先生へのインタビューになります。北村先生ならではの生徒の集中力を切らさないための工夫や指導方法が垣間見える興味深い記事となっておりますので、ぜひご覧ください。

視聴率を意識せよ

――今日の先生の授業では、生徒たちの集中力が途切れないように、あらゆる面で非常に工夫されているという印象を受けました。

北村 最終的には「集中力」という言葉につながっているのかと思いますが、私自身、演劇を噛んでいたこともありまして、自分を見られていないと嫌なんですね(笑)。
演出家に「お前らは今、しゃべっているけれども、どんどん視聴率が落ちているぞ。これがテレビだったら消されるぞ」と言われ、「みんなが車座になって、何でもいいからしゃべれ」という訓練をさせられたことがあります。どんどん面白いことをしゃべらないといけない。そうでないと、今の視聴者、消費者、観客は離れていってしまう、と。
そういう経験を経てきたので、授業でも、「あっ、視聴率が下がってきているな」と感じたら、それを回復させるために何かを投げ込むこともあります。当然、始めからそれ(視聴率)を下げないためにも、今の授業のような形で小刻みにいろんなことをしているのです。
これまでの現国の授業でも、教科書だけを50分やるのではなく、途中でそこに関連するプリント教材など、必ず何かちょっとしたアクセントを入れるようにしています。それらが積み上がって、『論理エンジン』の授業にも生かされているかと思います。

――おそらく生徒も50分を短く感じると思います。短い時間で区切って、次から次へと飽きさせない授業形式を行うにあたって、何かコツのようなものはございますか。

北村 「50分間集中力が保つことは非常に難しい、必ずどこかで何か違うことを投げ込んであげないといけない」ということを常に意識しています。投げ込むものはプリントということもありますが、とにかく、その時に手を動かすことが大切です。今日であれば、手を動かして線を引かせて読むということです。その次は覚えるということで、また違うところを使います。
あと、授業で常々注意しているのは、板書と説明と発問のバランスをどうとるかです。やはり板書が少なすぎると、彼らの手の動きが減り、脳への刺激も減少します。しかし、発問がないと、首から下は動いているが、首から上はまったく働かないという状態になってしまいます。もちろん、こちら側の説明も必要になってくる。でも、それが長すぎるとまぶたが閉じてくる。
だから、これらのバランスはいつも気をつけています。もちろん中身を良くしていくことは常々考えていますが、聞いてもらわないことには、中身がどれだけ精選されていても、相手に伝わりませんから。そのあたりに注意して、要約・語句プリントなどを用意するようにしています。

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授業における様々な工夫

――最初のプリント要約は、沢山の文章を目にすることができるので、素晴らしいと思いました。必ず要点となる一文に傍線を引くことを毎回、課しているわけですね。

北村 そうですね。

――また、文章プリントと『論理エンジン』の合間に語句のテストをするのも、読解→記憶→読解と目先が変わるので、集中という意味からも良いアイデアだと思いました。

北村 語句の方は、出題大学名が入るようにプリントを作っています。「入試に使われた語句だから覚えていこう」となり、彼らにモチベーションがわくのではと思いまして。
文章と語句のプリントは20分、普段の授業は30分と考えているので、それ以上超えないようにストップウォッチを使ってやっています。ストップウォッチを使うことによって、こちら側も時間管理できますが、生徒も長文を早く読むための練習になります。時間を課して集中力を高め、「この間にこれだけやろう」というのをわかりやすくさせてやるようにしています。

――逆接に逆三角形のマークを付けさせるなど、文の構成を目に見える形で示すことを徹底させていましたね。
また、今日は具体と抽象を非常にわかりやすい図で板書されていらっしゃいました。「何が具象で何が抽象か」「帰納と演繹はどう違うのか」といった、言葉は読め、意味はなんとなく知っているけれど、具体的にどういうことを指すのか解りにくい言葉を、子どもたちにビジュアル化して説明する手法が素晴らしかったです。

北村 できるだけビジュアル化するように心がけています。「1分間でしゃべれるのは300字ぐらい、文章にすると読めるのは1000字まで増え、ビジュアルにするとさらにその2倍の情報が入る」と、あるプレゼンの本で読んだことがあります。なので、グラフや図をできるだけ使おうと思っています。でも、なかなか難しいですね。時間がない中での準備ですので、いつもビジュアル化できるとは限りません。ただ、意識はするようにしています。

――最後になりましたが、いま『論理エンジン』で学んでいるすべての生徒たちに、ここを心に留めながら『論理エンジン』に取り組むといい、というポイントを教えてください。

北村 やはり基本が一番大切だと思います。『論理エンジン』の基本といえば、「すべてにつながりがある」。それは語句と語句もそうですし、一文と一文、段落と段落、すべてにおいてそのつながりを意識して読んでいくことが大切だと思っています。

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