イコールの関係

イコールの関係をつかまえる

「論理エンジン」では、文と文を関係づけるものとして、指示語と接続語を重視している。実際、読解問題の多くは指示語や接続語が絡んでいるのである。
また、私たちが言葉でものを考えているかぎり、正確な指示語、接続語の使い方を習得するだけで、論理的な思考が可能になる。
そうした訓練をたっぷりと積んだあとで、短い文章を使って論理の基礎を身につけていただきたい。

筆者は筋道を立てて、自分の主張を他者に向かって説明しようとする。その筋道の立て方(論理)は、突きつめれば三つの言葉の使い方にすぎない。
この三つの言葉の使い方さえわかれば、現代文だけでなく英語や古文、漢文の読解や小論文で大いに威力を発揮する。

1.イコールの関係
2.対立関係
3.因果関係

ここでは、まず、「イコールの関係」からみていこう。
筆者は自分の主張を論理的に説明しようとすれば、その裏付けとなる具体例をあげたり、自分の体験を紹介したり、自分と同じことを主張している人の文章を引用したりする。
筆者の主張が一般であるのに対して、具体例や体験、引用などは具体となる。

A 筆者の主張(一般)=A´ 具体例・体験・引用(具体)

私たちが文章を読むとき、それが一般なのか具体なのかをたえず意識し、一般と思われる箇所に線を引っ張っておく。それが、筆者が主張したい部分であるからである。そこで必要になるのが、「抽象」という能力である。

抽象とは

共通点を取り出すことを、抽象という。
A君、B君、C君というように一人ひとりの違いを具体とすれば、その共通点である「男」は一般で、この「具体→一般」という働きを抽象というのである。

論理的な文章は、具体と一般のあいだを行き来する。
そして、文章中の一般化された箇所を発見し、そこに線を引いて読んでいく。それが抽象化の能力である。
こうした能力が速読力につながっていく。現代評論であろうと、英文であろうと、大事な要点をすばやく発見できるようになる。文章の骨(要点)を抜き取り、それを論理の順番に組み立て直すのだ。
論理の世界に入るために、もっとも大切なのは、抽象という概念である。抽象を体得するために、次の問題を試してほしい。

【解説】

文章を論理的に考えれば、冒頭にA(一般)がくるか、A´ (具体例)がくるかのどちらかである。

(1)Aが冒頭にくる場合

Aを論証する必要があるので、次にA´(具体)がくる。もちろん具体例などで終わる文章はまとまりが悪いので、最後にもう一度、Aを結論としてもってくる。
A→A´→Aのサンドイッチ型が多い。

(2)A´が冒頭にくる場合

どこかで必ず一般化するから、Aを探して一息に読んでいく。A´→Aの論理パターンである。あとは、Aを主張するだけの文章か、Aを前提にBを導く文章か、そのどちらかである。その場合、A→Bは因果関係である。

比喩とは

筆者が主張したいことが一般的なものであればあるほど、それは形がなく、目にみえない。そのため、「理屈はわかるけど、なんかピンとこない」となる。
そういった場合、筆者はその一般的なものを、なにか身近なものにいったん置き換え、同じことをくりかえすことになる。
これが「比喩」である。多くの人が比喩は感覚だと思っているかもしれないが、じつは論理であり、「イコールの関係」なのである。

比喩には、(1)直喩と(2)隠喩(メタファー)がある。
(1)は直接の比喩。「彼女の頬はリンゴのようだ」がそれである。
(2)は隠された比喩。「リンゴの頬」が隠喩である。隠喩は、いったん直喩に直して考えるとよい。
次の問題を試してみよう。

【解説】

「たとえるもの」と「たとえられるもの」とのあいだには、「イコールの関係」が成り立つ。
冒頭の「語られざることは存在しない」という筆者の主張を印象づけるため、それを「幽霊」という身近なものにたとえたのだ。それが比喩であり、そこには「イコールの関係」がある。

たとえるもの【幽霊】= たとえられるもの【存在しないこと】

このように、言葉を感覚ではなく、規則に従って扱っていく。

9つの論理メソッド