コラム

語彙力を育てる“漢字教育” ~日本語力の土台づくり~
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出口 汪
語彙力
漢字
思考力

幼児期から小学校期に育まれる「漢字の意味理解」は、語彙力の核となり、思考力と表現力の土台をつくります。本コラムでは、“漢字=語彙”という視点から、漢字教育の本質と語彙が伸びる仕組みを分かりやすく解説します。

日本語力の土台づくり

「語彙力を高めたい」「文章が読めるようになりたい」。
こうした相談を受けるたびに、私は必ず“漢字”の重要性を伝えています。
というのも、日本語における語彙の多くは漢字によって構成されており、漢字を理解すること=語彙を増やすことに直結しているからです。

日本語の単語(語)は、大きく「自立語」と「付属語」に分けられます。助詞や助動詞にあたる付属語は単独で文節をつくれませんが、自立語には単語そのものに意味があります。そしてそのほとんどが漢字によって書かれています。
特に幼児期から小学校期にかけて接する語の多くは漢字語ですから、この時期に漢字を「語彙」として習得することは、言語発達にとって極めて重要です。

「書ける漢字」だけを教えても語彙は育たない

現在の漢字教育は「書き取り」が中心に置かれがちです。しかし、ただ書けるだけでは語彙力は身につきません。
大切なのは、漢字を“意味をもった語”として理解することです。

AI時代に細かな知識を丸暗記する必要はありません。調べれば分かる情報は記憶に定着しにくく、繰り返し使う機会も少ないからです。
一方、言葉は日常的に使い続けることで身についていくものです。文章を読み、考え、表現するための「武器」として語彙が必要になります。語彙が豊かであれば、思考の幅も表現の精度も大きく広がります。

幼児教育で私が実践しているのは、漢字を「読めるようにすること」です。
“読める”ということは、その言葉の意味が理解できるということ。
「犬」なら犬のイメージが、「猫」なら猫のイメージが脳に結びつき、語彙として確実に定着していきます。

小学校で身につけるべき漢字の本質

実は、小学校で学ぶ教育漢字の多くは単漢字の訓読みです。
訓読みとは、漢字がもつ意味をそのまま表した読み方。
「犬」「猫」「森」「海」など、具体的でイメージしやすい語が多く、この段階でしっかり意味を捉えることが重要になります。

そして、小学校高学年になると、子どもたちは急速に抽象概念を理解し始めます。
「愛」「罪」「価値」など、目に見えない概念を表す漢字が語彙として入ってくる時期です。
こうした語を文字として理解し、脳に取り込むことで、思考力そのものが大きく発達していきます。

中学校以降で必要になる「二字熟語」の世界

中学校で新たに学ぶ漢字は決して多くありません。
むしろ中心となるのは「小学校で学んだ漢字を組み合わせること」、つまり二字熟語の理解です。

二字熟語はほとんどが音読みで構成されており、「抽象」「具体」「思想」「文化」など、思考に不可欠な概念が数多く含まれています。
しかし、小学校段階で単漢字の意味が十分に理解されていなければ、熟語を読んでも本質がつかめません。
語彙力の伸び悩みはここに大きな要因があります。

漢字から意味をとらえる力──高校入試問題から見る“語彙力”

たとえば、公立高校入試で次のような問題が出題されています。

「洞察」という語の意味を、漢和辞典を用いて考えなさい。

「洞」は“見抜く・貫く”、“察”は“調べる・考える・わきまえる”という意味があります。
つまり「洞察」とは、物事の本質を考え、見抜くこと
単漢字の意味を理解していれば、自然と熟語の意味も導くことができます。

これはまさに、私が提唱している「漢字=語彙」という考え方を裏づけるものです。

語彙力を伸ばす鍵は、幼児期〜小学校での“意味ある漢字習得”

語彙力とは、単なる知識の積み重ねではありません。
漢字という「意味のまとまり」を脳に蓄積し、それらを組み合わせることで新たな語彙が生まれ、思考が深まっていきます。

もし語彙力に伸び悩みがあるとすれば、小学校で習った単漢字 ─ 特に抽象概念に関わる語 ─ をもう一度しっかり学び直すことで、劇的に改善することがあります。

語彙は雪だるま式に増えていくものです。
その核となるのは、幼児期から小学校で培われる「漢字の意味理解」。
ここが固まれば、読解力も表現力も、そして思考力そのものも大きく伸びていくのです。

論理JPでは、言葉の力を育てるための学習メソッドや教材、を発信しています。語彙力や読解力を伸ばしたい方は、あわせてご覧ください。


引用:出口汪の学びチャンネル

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