コラム

論理は心を伝えるためにある ~出口汪の現代文講義~
image
出口 汪
論理力
現代文
具体
抽象

現代文の指導で多くの先生が悩むのは、「生徒が本文の要点をうまくつかめない」という点ではないでしょうか。
「要点とは筆者の主張、つまり抽象的な部分を見抜くこと」。具体例はあくまでその主張を支えるためにある――この基本を押さえることが、すべての読解の出発点なのです。

講義では、ある文章をもとに筆者の体験エピソード(赤ん坊や幼児の「声」にまつわる話)を題材に、具体と抽象の関係を解説します。
半年の赤ん坊が「声を発する」ことを通じて筆者が気づいたのは、「声とは、人が世界の中で自らの存在を示す行為である」という普遍的な真理。
個人的な体験を通して筆者が導き出したこの抽象的な主張こそ、要点なのです。

要点=主張をどう見つけるか

論理的な文章において、要点とは筆者の主張です。
では、その主張をどう見つけるか? 出口式読解では「具体化・抽象化」という視点が鍵になるとお話ししています。

具体化──筆者が主張を補強するために挙げる事例やエピソード

抽象化──個別の事実をより大きな概念にまとめ上げる視点

この往復を意識しながら読むことで、文章の「骨格」である要点にたどり着くことが可能になります。

「声」を通じて見える主張

講義で取り上げた例文では、「赤ん坊の発声」や「幼い娘の声」を通して、筆者の気づきが語られます。
これらはすべて「声」にまつわる具体的な体験です。

・赤ん坊が声を発した瞬間、筆者の心が動く
・娘が空に向かって叫ぶ声に、生命の存在を感じる

こうした具体的な体験を通して導かれる抽象的な主張は、
「声を発することは、主体として世界に自らを現す行為である」というものです。

つまり、“声”とは単なる音ではなく、人間が「ここにいる」と世界に告げる存在の証なのです。

問われる傍線部と設問への応答

たとえば「傍線部は筆者のどのような心理を表しているか?」と問われた場合、
傍線が指す部分が「声を聞いた途端、“話しかけている”と思った」という心理描写であるならば、
それは「声を発することへの驚き」と「主体性への意識」が混在した心の動きである、という解答になります。

要点=「声を発することは存在を示す行為」ならば、傍線部はその主張の核を支える感情・認識表現だと読むことが合理的です。

小さな主張を見つける訓練

出口式の読解では、「本文全体の主張を1つ見つける」力をまず養います。
本文は、多くの場合、一つの強い主張(抽象)を中心に置き、それを支える具体例が展開されている構成になっているからです。

ですから、設問は要点=主張を捉えられているかどうかを問いただすものと捉え直すと、読み方がシンプルに整理されます

教室で実践するために

こうした「主張と具体」「論理と感情」の往復を、
授業で自然に身につけさせるには、体系的な教材が役立ちます。
出口式の教材シリーズでは、出口式の考え方をベースに、
具体から抽象を導き、要点をつかむ練習を段階的に積むことができます。

教室での指導や学び直しの場面で、ぜひ一度手に取ってみてください。

引用:出口汪の学びチャンネル

関連する記事

人気の記事