コラム

若者崩壊 ~努力を放棄する時代の行方~
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出口 汪
論理力
教育

便利さに囲まれ、努力しなくても満たされる現代社会。しかしその先に待つのは、人間関係の希薄化と挑戦心の喪失です。「若者崩壊」と題して、未来に迫る危機と教育の重要性について鋭く警鐘を鳴らします。

若者崩壊

私は今の子どもたち、そして若者たちの姿に、大きな危機感を抱いています。学校現場の先生方や校長先生、教育委員会の方々と話す機会も多いのですが、「若者の間に広がるある風潮」について語ると、多くの先生が強く同意されます。

その風潮とは――「頑張らなくてもいいのではないか」という価値観です。

かつての世代は、競争の中で生き残るために必死に努力することが当たり前でした。ところが現代では「車はいらない」「大きな家に住まなくてもいい」「それほどお金がなくても生活できる」という考え方が広まりつつあります。一見すると合理的で間違いではありません。しかし、私はそこに大きな危うさを感じるのです。

部屋の中で完結する生活

現代はテクノロジーの進化によって、お金をかけなくても楽しめる環境が整いました。

・音楽は定額制や無料サービスで聴き放題
・ゲームも無料で無数に楽しめる
・映画やドラマも自宅で好きなだけ視聴できる
・本や漫画も電子書籍で安価に読める
・食事はコンビニや冷凍食品、宅配サービスで簡単に手に入る

こうした便利さは、かつての世代から見れば夢のようです。しかし同時に「外に出なくても十分楽しい」環境が整ったとも言えます。テレワークの普及も加わり、仕事さえも自宅で完結してしまう。

その結果、人は外へ出ることを避け、面倒な人間関係や恋愛を避け、部屋の中だけで生きていける時代が現実になりつつあります。

競争なき社会の行き着く先

では、この状況をどう捉えるべきでしょうか。
「頑張らなくても人生は楽しめる」――確かにそうかもしれません。けれども、人間が努力を放棄し、挑戦もせず、与えられた環境だけで満足してしまったら、果たして社会や文化はどうなっていくのでしょう。

私は、今の若者以上に、これから生まれてくる子どもたちに危機を感じています。彼らは生まれながらにして「部屋から一歩も出なくても満たされる世界」を当然のものとして育ちます。そのとき、人間の生き方や社会のあり方は大きく変わってしまうでしょう。

教育の役割

だからこそ教育が重要です。
「幼いころは自由に遊ばせればよい」という考え方もありますが、現代の環境では放っておけば子どもはゲームや動画漬けになってしまう。親はそれを望んでいないはずです。

しっかりとした教育を通して、「努力する意味」「社会と関わる力」「自らの人生を切り拓く姿勢」を育てなければ、未来の子どもたちは閉じこもったまま成長してしまいます。

恐ろしい時代に備えるために

便利さに満ちた社会は素晴らしい反面、人間から「努力」「挑戦」「人間関係」といった成長の糧を奪いかねません。
今私たちに問われているのは、そんな時代にどう向き合い、次世代にどんな教育を施すかです。

来るべき未来は、ある意味で面白く、しかし同時に恐ろしい。
だからこそ、私たちは今一度、原点に立ち返って考え直す必要があるのです。

引用:出口汪の学びチャンネル

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