入試現代文は「日本語だから何とかなる」と思われがちですが、実際に問われているのは論理的に文章を読み解く力です。本コラムでは、現代文が苦手になる本当の理由を明らかにし、評論・小説・詩歌それぞれで必要となる論理的読解の視点を解説します。国語の成績向上にとどまらず、思考力・表現力を育て、あらゆる学びの基盤となる「論理の力」を授業にどう取り入れるかを提案します。
「現代文は日本語だから特別な勉強は不要」「センスや感覚で解けるもの」――こうした誤解を持ったまま学習を進めている生徒が少なくありません。
しかし現代文で問われているのは、日常的な日本語運用能力ではなく、論理的に文章を読み、筆者の主張と根拠を把握する力です。
大学入試問題は、中高生が普段触れないテーマや文体で書かれた評論・論文から出題されます。そこでは筆者が、まだ広く知られていない事実や誤解されやすいテーマについて、自らの主張を論証し、根拠や反対意見への反論を積み重ねています。
このような文章を理解するには、日常会話の延長ではなく、論理展開を追う訓練が不可欠です。
入試で出題される小説は、多くの場合、長編の一部分が切り取られています。時代背景や人物像の説明がほとんど与えられないため、生徒は本文中の情報を根拠に心情を分析しなければなりません。
また詩歌も同様で、単独で出題されることは稀です。多くは評論文中に引用され、その引用を筆者がどう捉えているかを問う形で出題されます。
したがって「自分はこう感じた」ではなく、「筆者はどう解釈しているのか」を論理的に読み解く力が必要になります。
論理を意識せずに読むのは、真っ暗な道を手探りで歩くようなものです。ゴールも道筋も見えないまま、感覚的に解釈して誤答を繰り返します。
一方で論理を意識すれば、文章の展開は「いまどこにいて、次はどこへ進み、最終的にどこへ至るか」が明確に見えてきます。頭の中で情報を整理し、設問にも筋道を立てて答えられるようになるのです。
現代文を論理的に読む訓練は、国語の得点向上だけでなく、他教科の理解にも直結します。論理的思考力、表現力、文章読解力といった基盤は、大学での研究活動や社会でのコミュニケーションにおいても必須の力です。
しかし現状では、国語教育の中で「論理を読む訓練」が十分に行われず、生徒が感覚的に解釈するままになっているケースも少なくありません。ここにこそ、私たち教育者が取り組むべき課題があります。
生徒たちが現代文を「感覚」で解くのではなく、「論理」を基盤にして読解する力を身につけられるようにすること――それが、学習効果を最大化し、他教科にもつながる言語力を育むための第一歩です。
ぜひ現場での指導においても、「論理的読解」の視点を意識していただければ幸いです。
引用：出口汪の学びチャンネル
