一の言葉と二の言葉
◆一の言葉とは
「一の言葉」とは、抽象的で機械的な言葉を指します。例えば、科学的で普遍的な内容を持つ言葉や、事実に基づいた論理的な表現がこれに当たります。コンピューターのような正確さを重視する反面、相手の心情に寄り添う力には欠けています。
◆二の言葉とは
一方で、「二の言葉」は具体的で命のこもった言葉です。それは相手の状況や心情に深く結びつき、心を動かす力を持っています。「二の言葉」は、現代社会で忘れられがちな「心の響き」を取り戻す鍵になるのです。
この2種類の言葉は、現代の文化にも深く影響しています。もともと「二の言葉」が中心だったはずの私たちのコミュニケーションは、いつの間にか「一の言葉」へと偏り、文化を痩せさせてしまったと筆者は指摘します。
昔、人々は死をもっと身近に感じていました。大家族が主流で、自宅で最期を迎えることが一般的だったためです。しかし現代では、核家族化や医療の進化により、死は遠い存在になりました。患者は治療室で機械に囲まれ、医療者からは「一の言葉」が投げかけられます。
しかし、死を目前にした患者が求めるのは「一の言葉」ではありません。彼らが必要としているのは、恐怖や孤独に寄り添い、自分の死という具体的な問題について共感を示す「二の言葉」なのです。














