コラム

文学が教える「二の言葉」の力と小論文の意義
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出口 汪
小論文
言葉

現代社会において、言葉は単なる情報伝達の手段ではありません。この力を成長させるためには「小論文」が有効だと考えています。このコラムを読んでぜひ小論文に関心を持って欲しいです。

imagesこんにちは、出口汪です。今回は「論理で書ける小論文」をテーマに、小論文の学びがいかに有効であるかをお話ししたいと思います。その中でも特に興味深い課題について取り上げます。この課題は、日々のストックとしても活用でき、さらに教養を深めるきっかけにもなるでしょう。


課題文は非常に長いものですが、その多くは実際の具体例で構成されています。特に医療現場、例えばお医者さんや看護師の視点から書かれた内容が中心です。そのテーマとは、「末期がん患者への対応」です。もう治療が難しい状態の患者に対して、医師や看護師はどのような言葉を投げかけるべきなのでしょうか。

ここで、課題文の筆者は「言葉」を2つの種類に分けて論じています。それが「一の言葉」と「二の言葉」です。

一の言葉と二の言葉

◆一の言葉とは
「一の言葉」とは、抽象的で機械的な言葉を指します。例えば、科学的で普遍的な内容を持つ言葉や、事実に基づいた論理的な表現がこれに当たります。コンピューターのような正確さを重視する反面、相手の心情に寄り添う力には欠けています。

◆二の言葉とは
一方で、「二の言葉」は具体的で命のこもった言葉です。それは相手の状況や心情に深く結びつき、心を動かす力を持っています。「二の言葉」は、現代社会で忘れられがちな「心の響き」を取り戻す鍵になるのです。

この2種類の言葉は、現代の文化にも深く影響しています。もともと「二の言葉」が中心だったはずの私たちのコミュニケーションは、いつの間にか「一の言葉」へと偏り、文化を痩せさせてしまったと筆者は指摘します。

昔、人々は死をもっと身近に感じていました。大家族が主流で、自宅で最期を迎えることが一般的だったためです。しかし現代では、核家族化や医療の進化により、死は遠い存在になりました。患者は治療室で機械に囲まれ、医療者からは「一の言葉」が投げかけられます。
しかし、死を目前にした患者が求めるのは「一の言葉」ではありません。彼らが必要としているのは、恐怖や孤独に寄り添い、自分の死という具体的な問題について共感を示す「二の言葉」なのです。

文学の役割

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文学が持つ価値はまさにこの「二の言葉」にあります。個々の感情や状況を描き、人々の心に響く力を持つ文学は、単なる情報や正しさを超えたものを提供します。
たとえば、感謝の言葉「ありがとう」を考えてみてください。同じ言葉でも、心がこもっているかどうかでその意味は全く異なります。心のこもった「ありがとう」は、言葉以上の感動を相手に伝えます。これが「二の言葉」の力です。

小論文の意義

小論文の練習は、「二の言葉」を鍛える絶好の機会です。多様なテーマについて考え、問いを立て、論じるプロセスを通じて、私たちは自分の価値観や感情を深く掘り下げることができます。
私は、問いを立てる力を養うことの重要性を強調します。その問いが明確で深いほど、言葉に命を吹き込むことができるのです。このプロセスは、小論文に限らず、日常のコミュニケーションにも応用できる普遍的なスキルです。

このコラムをきっかけに、小論文や言葉の力について考える一歩を踏み出してみませんか?

引用:出口汪の学びチャンネル

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