コラム

最強のプロ国語教師は、平成の吉田松陰だった~志桜塾代表 長谷 剛先生~第2部 オープンスキル、クローズドスキル(1)
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Writer S

前回のコラムに引き続き、今回も志桜塾 長谷 剛先生になります。そして今回は長谷へのインタビュー形式でお話を伺った模様をお届けします。長谷先生独自のスポーツ科学的アプローチである機能分析を教育業界に導入した、そのメソッドが垣間見える貴重なインタビューとなりますので、ぜひご覧ください。

教師としてのスタートライン

―― 先生が高校の国語科教諭を目指されたきっかけを教えてください。

長谷 大学時代は、実は小学校教員養成課程でした。ですから、小学校免許を主としながら、中学に上げ、高校に上げ……。
ちなみに国語は、それなりに昔から得意でした。でも、大学入試の2次試験で選択したのは数学でしたね。その方が分かりやすかったから(笑)。

―― ではなぜ国語の道に?

長谷 小学校教員養成課程の中で、どこかのゼミに属さなければならなくなった時、数学 は好きで出来たんですけども、やっぱり文系ですから、学んでこなかった数学ⅢCがキツイだろうと思ったんです。
国語だったら何とかなるんじゃないかっていう安易な思いでした(笑)。

―― エピソードとしては非常に面白いですね。

長谷 選んじゃったんですよ。そうしたら、そのゼミの“コッケン”という通称は、国研ではなく、残酷の酷だった(笑)。つまり、酷研でした。
私はテニス部で、高校時代もインターハイに行って、大学でも「やるぞ!」という意気込みで、大学の2次試験が終わった後、ラケットを買って帰ったんですよ。
親が、受験だから余分にお金持たせてくれるじゃないですか。その余分なお金で(笑)。家に帰って第一声が、「試験できたよ」ではなく、「いいラケットがあったよ」だったので、すごく叱られた記憶があります。

―― たしか、教員一家でいらっしゃいましたよね。

長谷 はい。父が小学校の教員なので、後を継ぐような気持ちで、最初は小学校の課程に 入ったんです。だけど、やっぱり部活でテニスを指導できるのは高校しかないので、教員採用試験に5回目で受かって、国語の先生になりました。
講師時代は、正直に言うと、答えを見ながら適当なことを授業で言っていましたね。1年目、教壇に立ったときには、隣の先生に「現代文なんて教えられませんよね」っていうところからスタートしたんです(笑)。
講師2年目に、すごく賢い男の生徒がいました。柔道に打ち込んでいた子だったので、同じ体育会系の匂いを私に感じたのでしょうか、勢いだけでやっていた私を、「あの先生、ちゃんと頑張ってる」とか、「あの先生はよく分かる」等と褒めてくれたんです。それがかえって申し訳なくて、そこから本格的に勉強したと言いますか。

国語に要求されるスキルとは

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―― 今の魔術的な授業を拝見すると、そのお言葉はすごく意外ですね。

長谷 それからは、出口さんをはじめとして、予備校で受験生が解くような問題集をとにかく片っ端から解きました。少しずつ、「現代文というのは、もしかしたらこういう風なものかもしれない」という形がおぼろげながら見えてきたのですが、やっぱり、それが形になったといえるのは、本当、ここ数年ですね。自分が理解したことを、きちんと目の前の生徒に伝えられるようになり、そして、生徒の驚きに変えられるようになったのは。
東大・京大に合格した生徒をはじめ、沢山の生徒を見て、試行錯誤した末です。

―― 「国語の勉強の仕方が分からない」と言われる理由の一つは、おそらく、教師と生徒との間に伝わる言葉、共通言語が少ないからだと思うんですよ。
数学や英語でしたら、「文法・構文的にここが間違っている」とか、「これは公式とは違うね」等と、生徒に間違いを指摘しやすいのですが、国語は体系的に教わらないので、生徒が書いた文章がどのようにおかしいかを伝える際に皆さんご苦労されると聞きます――長谷先生がよくおっしゃる、“イメージをどう共有するか”という問題を、どのようにして解決されたんですか。

長谷 国語は、よくそういう風に曖昧だと言われますね。よく言うのですが、さあ模試を今からやりましょう、という時に、「何を見て解いてもいいよ。好きに見て」って生徒に言うと、英語・数学なら、辞書や公式集を見れば、何とかなりそうですよね。じゃあ、「はい現代文、何見てもいいよ」となると……。

―― 生徒さん、困っちゃいますよね。

長谷 「先生、漢字しか書けないんですけど」って(笑)。
では、テニスコートに立ったとき、「テニスが上手くなる本を持って入ろうよ」って 生徒に言うと、「それは先生、うまくなりません」って言われる。

―― そうでしょうね。

長谷 英語、数学のときには、いろんな参考書とか、辞書とか、知識物をたくさん持って入ればできるって考える。
でも運動。野球、サッカー、バスケ、バレー、テニス。「参考書持って入ろうよ」と言っても、誰も持って入らないし、「そんなことじゃうまくならない」って、みんな分かっている。
結局、要求されるスキルが、それぞれ全然違うんですね。それがテニスや国語のようなオープンスキルと、英・数のようなクローズドスキルなんです。

次回に続きます・・・

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