コラム

最強のプロ国語教師は、平成の吉田松陰だった~志桜塾代表 長谷 剛先生~第1部 それは、国語という名の魔術だった(3)
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Writer S

今回も、平成の吉田松陰・志桜塾代表 長谷 剛先生の問題解説を模様をお届けします。

カタチから考える

長谷 さて、「からだが家のなかにある」という文に傍線部Aが引かれています。
ここで問が出てきました。

                    ◆
ここに「傍線部Aとはどういうことか」とありますが、国語の問題というのは、結局2種類しかない、と前に言ったよね。「どういうことか」と「なぜか」しかありません。
そして、「どういうことか」と聞かれた時は、イコールの関係の説明を求めているわけでしょう? だって、「どういうこと?」って聞いたら説明するじゃない。ということは、傍線部Aとイコールであればいい、ということだよね。どれがイコールっていうのを探すだけでしょう?
「からだが家のなかにあるということはそういうことだ」とある以上、前に指示語が来ないといけないけど、「そういうこと」って言われても、第2段落、第3段落、どちらもめちゃめちゃ長いよね。
なので、もう1文だけちょっと見てみる。すると、この傍線部Aの次に、「からだの動きが、空間との関係で、ということは同じくそこにいる他のひとびととの関係で、ある形に整えられているということだ」という文章が出てくる。
そこで、傍線部Aとこの次の文章との関係を見てみたい。ここに三角カッコを置いたら何を入れる?


生徒D 『つまり』

長谷 あったじゃない、イコールの文が。
では、この一文「からだの動きが、空間との関係で、ということは同じくそこにいる他のひとびととの関係で、ある形に整えられているということだ」……ちょっと変な文章だが。Eさん、論理的って、そもそもどういう意味だった?

生徒E 論理的に順序立てること。

長谷 数学って必ずイコールだよね。Eさん、こんな2つの式があったら、どちらが論理的?

生徒E 左です。

長谷 数学やっていて、最後の答えが長くなったらもう一遍やり直しでしょう。
左図のように、短くスッキリなっていくのが、論理的でしょう。当たり前だよね。
今、本文を冷静に見てごらん。各段落が全てイコールの関係で結ばれてあって、最後のこの文は、何となく短くスッキリしている。
では、
「からだの動きが、空間との関係で、ということは同じくそこにいる他のひとびととの関係で、ある形に整えられているということだ」
という文章の骨格を書き抜いてみよう。いい?めちゃめちゃ短くね。

(1分後・・・)

長谷 さあ、挙げてみましょう。

生徒A からだの動きが状況に応じて変化する家。

長谷 書き換えたな。書き換えは、もうちょっとしたら教えてあげるから、まだ書き換えしちゃダメだよ。次B君。

生徒B からだの動きが他人との関係で狭められること。

長谷 少し長いな。Cさん。

生徒C からだの動きが整えられていること。

長谷 その通り。
「からだの動きが整えられている」というのは、単純に主語・述語を取っただけなんだよ。それが答え。
主語・述語の間に、こういう構造で、この一文が出来てるね。
Cさんが言った「空間との関係で」、Bさんが言った「他人との関係で」、整えられる。

となると、全体構造としては、傍線部Aイコール、こういう構造の次の文章になっています。

以上を押さえた上で、ちょっとだけ第5段落を見ていきましょう。
第4段落と第5段落との間に入る接続詞は……。みなさん書けましたか?

生徒D 『しかし』。

長谷 偉い、そのとおりだね。「しかし」というのは、転換するんだ。逆接のときもあるのだけど、転換っていう意味で覚えておいてほしい。
さて、話が転換しました。ここまでイコールの関係でずっと来たものが転換する。で、質問は「どういうことか」という風にイコールの関係を聞いているのだから、とりあえずここまでで選択肢を解いていきましょう。

                    ◆
では続けていきます。
イコールの関係なので、選択肢の①②③④⑤ごとに論理的にしたい。短くスッキリさせるために、こういうふうに①②③④⑤って書いて、主語・述語を書き出してごらん。

では、確認していきます。
主語のところ、どうやら全部「身体」が入りそうだね。
じゃあ、述語。選択肢①は、「侵蝕されている」だよな。
C、選択肢②は?

生徒C 支配されている。

長谷 できるようになったじゃん。選択肢③。

生徒C 適応している。

長谷 やるじゃん。一気に成長したね。選択肢④。

生徒C 選択できている。

長谷 おう。選択肢⑤

生徒C 決定している。

長谷 完璧、完璧。

では、この述語の部分は、イコールの関係で言うと、傍線部Aのどこと対応しているのかな? 傍線部Aになかったら、この次の文から探してみよう。

生徒C 「整えられている」。

長谷 「整えられている」という所と対応しているね。だってイコールの関係だから。

次に、真ん中の飾りのところ「空間との関係で」「同じくそこにいる他のひとびととの関係で」と選択肢が対応しているか、チェックしてみよう。

選択肢に空間の話が書いてあれば丸をつけてください。
チェックしましょう。空間ってあったっけ。○か×か……。
じゃあ、Dさん。

生徒D 全部丸。

長谷 全部丸だね。全部に、空間の話は書いてあったでしょ。
はい、次、他人との関係。30秒でできるでしょ。
E、はい。

生徒E ①が〇、②が✕、③が✕、④が✕、⑤が〇。

長谷 ということは、イコールの関係である以上、答えとして良いのは①か⑤だよね。
この2つの関係、「空間との関係」と「他のひとびととの関係」は、どんな関係ですか。横に並んでいるってことは?

生徒E 並列。

長谷 そう、並列だな。選択肢①では並列になっているか、確認してごらん。
「空間では人間の身体が孤立することはないが、他のひとびとと暮らすなかで自然と身に付いた習慣によって、からだが侵蝕される。」
「が」は「しかし」だから、転換の関係だね。対立だね。ということは、これ本文と合ってる? 同じ構成?

生徒E いや、違います。

長谷 違うよな。だから答えは何番?

生徒E 5番です。

長谷 という形で⑤番が答えになります。だって、イコールの関係だから。
内容というより、関係としてどういう構成なのかが今聞かれている。
いい?

「どういうことか」という設問だから、答えはイコールの関係を聞かれたわけだ。そして、前に遡るのはやたら長いから、とりあえず後ろの構造図を見てみた。
イコールの質問を受けたんだから、選択肢も必ずイコールの関係になってくる。
だから、イコールの関係をチェックしてみたら、こんなに簡単に解答が出た。
センター試験ってのは、技術的にはこんなに簡単なんだ。

<✓ポイント>

問いとは
☆どういうことか?
☆なぜか?
の二種類。
論理的 = 短くスッキリ

取材記者たちは、ぐうの音も出ず、ただただ、茫然としていました。
もちろん生徒の目から鱗がぼろぼろ落ちていくのが、その身を前に乗り出す角度から手に取るように分かります。
こんな授業が、日常生活のなかに普通に存在する生徒たちに、空恐ろしささえ覚えました。
松江、おそるべし!

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