コラム

論理エンジン研修会の超人気先生~開智学園開智高等学校・加藤克巳先生~【後編】(2)「受験対策、そして学校改革」
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Writer S

さいたま市岩槻区。大都市の郊外、田園も程よく残る風景に建ち、秩序正しさの中に温かみがある校風の開智学園。全国有数の”論理の匠”でいらっしゃる加藤克己先生より再びインタビューを受けて頂きました。

当日朝8時半からお昼前まで、優しくご指導いただいた加藤先生。
そして、そこで垣間見た論理エンジンの理想型。論理の求道者とも言うべき先生のお人柄と、この教材の果てしない可能性に思いをめぐらせながら、高揚した気持ちで取材班はインタビューに臨みました。

答えにいたる筋道を問う

加藤 今回は予習をさせてきましたが、3年生では通常50分のうち、問題を20分で解き、残り30分で解説をして1題終わるという形をとります。今回のように丁寧に取り組ませるのは数回に一回程度なんです。

ただ、演習メインでやっていくと、どうしても解答することを目標にしてしまって、だんだん読みが粗くなります。
すると、まだセンター形式だったら良いのですが、記述になった時に、自分では書けているつもりでも、採点基準を外す子が増えてしまう。粗い読みをさせないためには、時折、今回のように丁寧に取り組ませる必要があります。

実は今の3年生は、1、2年時に私が全く授業に手を入れておらず、今年から初めて持ったクラスだったので、まだ発問の際にキョトンとしてしまうことが多いですね。

私は、論理エンジンの授業で発問する時、いちいち「なぜなのか」「どうしてなのか」を全て説明させます。2年生は聞かれ慣れているのですが、彼ら3年生はまだ私のスタイルに慣れていません。だから、「第一段落のポイントは何ですか」と訊いて、生徒が「ここです」と答えた後に、「なぜそのようになりましたか?」と問われると説明ができなかったのです。

―― 今日2年生の授業を見学させていただいた時にもっとも感動したポイントが、その受け答えの見事さだったのです。先生が答えに至る筋道を必ず問いかけ、生徒がそれに対して論理的に答える、それがクラスで完全に徹底されていました。発問の仕方や、授業の構成の仕方によって、やっぱり生徒も大きく変わってしまうのでしょうか。

加藤 すごく変わりますね。常々言うように、論理エンジンは指導者がポイントです。

設問分析・選択肢分析

加藤 今まで国公立の合格実績をあまり伸ばせていなかった本校が、論理エンジンをやるようになって、旧帝大にも二桁入れるようになってきたのは、やはり記述の力が伸びたからだと考えています。そして、この記述力を支えているのは、思考ルートがしっかりしていることなのです。

簡単な話、選択肢問題は試験問題に答えが印刷されています。それ以外に4つ選択肢があるから迷うだけの話です。答えが見えているので、設問意図を子どもたちがつかみ取れなくても、選択肢によって、「あ、こういうことを聞かれていたんだ」という風に振り戻すことができます。

けれども、記述の場合はそれがありません。記述においては、本文の読解に加えて、「設問意図が読めていないと、記述ができなくなってしまう」ということが、もう一つの大事なポイントなのです。ですから、今の3年生にも今日のようなプリントに取り組ませています。

このプリントにはグループで取り組ませます。例えばこの設問分析。現代文の問題は大まかに分けると「どういうことか」と聞かれるか、あるいは「なぜか」と聞かれるかの二つなので、どちらのパターンで聞かれているか、まずそれを考えるというわけです。
今日のこの問題でいうと、たとえば問2ですよね。これは次回やる予定なんですけれども、

問2 傍線部A「もともと地球の表面に境界はありません」とあるが、そのように言う筆者の意図を説明したものとして最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

この問題で言うと、「筆者の意図を説明させる」と、わざわざ「設問分析」に書かせるのです。これが設問の意図なのです。

そして、筆者の「意図」とは要するに「主張」なので、イコール主張と書かせる。
「説明」とは、これは「言い換え」ということですよね。

すると、傍線Aの「もともと地球の表面に境界はない」という筆者の主張を言い換えれば良いのだと分かる。

普通の高3生であれば、パッと読んで理解できなくはない文ですが、それをあえてわざわざ、言葉を換えて自分なりに分析させることによって、意識を変える訓練をしているのです。そうでないと、だんだん流して読むようになりますから。

先ほどもお話したように、センターの問題だと選択肢があるので、「設問意図」を読みそこなっても、選択肢を見れば修正されるんです。でも、記述の場合は、「設問意図」で考え違いをすると、自分としてはよく出来たつもりでも、実際には全く点にならない間違った答案を書いてくる。採点基準を外した答案を作ってします。すべての根本にあるのは「粗い読み」です。これは本文に対しても、設問に対しても言える。そういった不適切な読解態度を身につけさせないためにも、これはセンターの問題でも記述の問題でも必ずやらせます。

次は「選択肢分析」。選択肢分析を一つ一つやらせます。この時、「消去法により、これはダメ」というような安易なやり方はさせないで、論理エンジンの内容を入れていきます。
選択肢は一文でできています。なので、選択肢から「文の要点」をとらせます。つまり、それぞれの選択肢を主語・述語の関係で簡潔にまとめさせる。一方で飾りの部分も別途まとめさせる。

選択肢には、文の要点によって違いを出しているタイプと、飾りによって違いを出しているタイプがあるわけですが、このように「選択肢分析」をさせ、パターン学習で数多く訓練させることにより見分ける力を養うのです。生徒にしてみればとても面倒くさい手続きですが、ここは絶対に譲りません。授業後にはプリントを提出させ、私がさらに添削したうえでフィードバックします。

―― 加藤流オリジナルメソッドですね。そのスタイルの確立は、先生が今まで研究されて、生徒のことを見続けてきた蓄積の結果だと思うのですが、特に先生の授業はシステマティックに構成されて分かりやすい印象を受けました。

加藤 多分、どの教員も同じような思いでやっているとは思うのですが、システマティックに把握するよう教員自身が意識しているかどうかで違いが出るかもしれません。
これは教員の論理力にも関係すると思うのです。どの現代文の教員も、問題演習をやれば当然、本文を読んで、設問の意味を理解し、選択肢を分析するスタイルを必ずとるのです。それが、自分の中でシステマティックに把握されている、つまり自分の中で論理的に構成されているのか、カオスの状態に置かれているのかの違いだと思います。

グループワークについて

―― 話は変わりますが、今日の授業はグループワークで終わりました。おそらく次の授業は各グループごとに代表者が発表していくわけですね。どのように授業を展開されていくのでしょうか。

加藤 段落構成を明らかにして、中心段落にアプローチするのが今日のワークのテーマです。昔風に言うと「意味段落に分けなさい」という学習課題なのですが、意味段落の取り方自体はそれほど重要なことではありません。また一応、模範となる解答や思考ルートは想定してありますが、それと一致することも重要ではありません。

今日の学習で大切なのは、段落ごとに読んでいって、それらが全体を構成していくという意識を常に持って読むことなのです。これが今日のグループワークの、いわゆる教師側の指導目標です。

今日のワークを踏まえて次の授業の前半では、もう一回子どもたちに課題を話し合わせます。発表の準備ですね。多分それで10分くらいとってしまうでしょう。

その後グループを前に出して、2班くらいに「なぜそのようにしたのか」理由をつけて説明させます。その結果、理由づけが合理的であれば、それでOKなんです。理由が適当だったらダメなんですね。そこはディベート式です。みんなが納得すればそれでよしという。

―― 最終的に、生徒が納得した答えが解答と違っても構わないと。

加藤 はい、全然構わない。これは私が論理エンジンを教えるやり方とまったく一緒です。それで正解とします。ただ、段落構成や要旨の問題ですと、論理的に詰めていけばほぼ同じにはなってしまいます。間違った結論に達してしまったグループは、合理的な説明ができていないことが多いですからね。まあ、そういうグループがあったほうが授業は盛り上がるんですが。

で、次は実際の設問を分析させます。今回のようなセンター試験対策問題のレベルだと、実はあの子たちはほとんど正解に達しているんです。そのため、仮に私が黒板を使って長々と正解に到達するプロセスを解説しても、子供たちは飽きてしまいます。例えば、ほとんどの子が③と答えていて、解説を聞きながらも、みんな「③だ」と思っている。にもかかわらず私がそうなる理由を延々と説明する。聞かされる側にしてみれば、「いやあ先生、それは③ですよ」「いいですよ、もう」という感じになるんですね。

ところが、生徒同士で話し合わせるとまた違うのです。子どもたちは自分が「③である」という理由をしゃべりたい。「そうだよ、そうだよ」という感じでおしゃべりしたいんです。答えがばらつくような問題のときにはもっと面白い。真っ先に自分の答えの正当性を主張しだす子もいれば、じっくりと様子見の子もいる。で、おもむろに反撃したりする。いろいろ意見がぶつかる中で驚くほど本文の読み取りが深まっていきます。こちらが意図する以上に勝手に深めていくといった感じですね。そういう子供たちの活動を引っ張り出すことにより、いくらでも子どもたちは伸びていく。一方的な授業では実現できない、いくつもの学習効果があるんです。

―― グループワークでは皆さん積極的にしゃべっていました。子どもたちは「どうしてこうなったか」という理由を言いたいものなのですね。同じ答えにみんな到達しているのに、「でも、ここがこうだから、もっとこのように言えるでしょう」という風に、人の意見にかぶせて話しているのがすごく聞こえてきました。分かっているからこそ話したいのでしょうね。

―― 先生の授業構成や場づくりの工夫は、全てにおいて緻密に計算され尽くされたものなのだなと実感しました。

加藤 教わることが3分の1、学びあうことが3分の1、習熟することが3分の1、これが基本ですね。
このバランスは生徒の状況によって、あるいは扱う教材によって按配しなくてはならないのですが、私の場合「学びあい」を核として生徒を引き上げることが多いです。特に1・2年生で論理エンジンをしっかり指導しておくと、子供たちのコミュニケーション力が高まっているので、「学びあい」の効果は一層高まりますね。

(【後編】第3回に続きます・・・)

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