―― 話は変わりますが、今日の授業はグループワークで終わりました。おそらく次の授業は各グループごとに代表者が発表していくわけですね。どのように授業を展開されていくのでしょうか。
加藤 段落構成を明らかにして、中心段落にアプローチするのが今日のワークのテーマです。昔風に言うと「意味段落に分けなさい」という学習課題なのですが、意味段落の取り方自体はそれほど重要なことではありません。また一応、模範となる解答や思考ルートは想定してありますが、それと一致することも重要ではありません。
今日の学習で大切なのは、段落ごとに読んでいって、それらが全体を構成していくという意識を常に持って読むことなのです。これが今日のグループワークの、いわゆる教師側の指導目標です。
今日のワークを踏まえて次の授業の前半では、もう一回子どもたちに課題を話し合わせます。発表の準備ですね。多分それで10分くらいとってしまうでしょう。
その後グループを前に出して、2班くらいに「なぜそのようにしたのか」理由をつけて説明させます。その結果、理由づけが合理的であれば、それでOKなんです。理由が適当だったらダメなんですね。そこはディベート式です。みんなが納得すればそれでよしという。
―― 最終的に、生徒が納得した答えが解答と違っても構わないと。
加藤 はい、全然構わない。これは私が論理エンジンを教えるやり方とまったく一緒です。それで正解とします。ただ、段落構成や要旨の問題ですと、論理的に詰めていけばほぼ同じにはなってしまいます。間違った結論に達してしまったグループは、合理的な説明ができていないことが多いですからね。まあ、そういうグループがあったほうが授業は盛り上がるんですが。
で、次は実際の設問を分析させます。今回のようなセンター試験対策問題のレベルだと、実はあの子たちはほとんど正解に達しているんです。そのため、仮に私が黒板を使って長々と正解に到達するプロセスを解説しても、子供たちは飽きてしまいます。例えば、ほとんどの子が③と答えていて、解説を聞きながらも、みんな「③だ」と思っている。にもかかわらず私がそうなる理由を延々と説明する。聞かされる側にしてみれば、「いやあ先生、それは③ですよ」「いいですよ、もう」という感じになるんですね。
ところが、生徒同士で話し合わせるとまた違うのです。子どもたちは自分が「③である」という理由をしゃべりたい。「そうだよ、そうだよ」という感じでおしゃべりしたいんです。答えがばらつくような問題のときにはもっと面白い。真っ先に自分の答えの正当性を主張しだす子もいれば、じっくりと様子見の子もいる。で、おもむろに反撃したりする。いろいろ意見がぶつかる中で驚くほど本文の読み取りが深まっていきます。こちらが意図する以上に勝手に深めていくといった感じですね。そういう子供たちの活動を引っ張り出すことにより、いくらでも子どもたちは伸びていく。一方的な授業では実現できない、いくつもの学習効果があるんです。
―― グループワークでは皆さん積極的にしゃべっていました。子どもたちは「どうしてこうなったか」という理由を言いたいものなのですね。同じ答えにみんな到達しているのに、「でも、ここがこうだから、もっとこのように言えるでしょう」という風に、人の意見にかぶせて話しているのがすごく聞こえてきました。分かっているからこそ話したいのでしょうね。
―― 先生の授業構成や場づくりの工夫は、全てにおいて緻密に計算され尽くされたものなのだなと実感しました。
加藤 教わることが3分の1、学びあうことが3分の1、習熟することが3分の1、これが基本ですね。
このバランスは生徒の状況によって、あるいは扱う教材によって按配しなくてはならないのですが、私の場合「学びあい」を核として生徒を引き上げることが多いです。特に1・2年生で論理エンジンをしっかり指導しておくと、子供たちのコミュニケーション力が高まっているので、「学びあい」の効果は一層高まりますね。
(【後編】第3回に続きます・・・)