コラム

論理エンジン研修会の超人気先生~開智学園開智高等学校・加藤克巳先生~【前編】(4)「OSは単なる国語の問題集ではない」
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Writer S
開智学園
加藤克巳

引き続き、開智高校・加藤先生にインタビューした模様をお届けします。今回は論理エンジンを進めるための具体的な指導内容等を公開しておりますので、論理エンジンをお使いになっている皆さまはぜひ、ご参考にしてください。

OSは国語の問題集ではない

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―― 論理エンジンが少しでも理解されるよう、われわれも様々な試みをしているのですが、力不足を痛感します。

加藤 世の中にありますよね、良い物なんだけど、その良さが分かってもらいにくいものが。論理エンジンはその一つなのかなとも思います。

今まで論理エンジンを教えていない教員に、これを伝えていくとき、本校では実際に私の指導を見てもらうとか、あるいは何か問題があった時にすぐに聞きに来てもらうようにしています。本校の場合はそれが中で出来るのでまだいいですね。

現在、導入を考えている学校が、最初に導入をした場合、それがうまくいくか失敗するかは、「導入した先生が本当にどこまで論理エンジンに惚れこめるのか」が、ポイントになると思います。導入した責任を自分で取って他の先生を指導していく位の気構えがないと、何となくの採用だとやっぱり難しいと思うのです。

単なる国語の問題集として使ってしまうと、論理エンジンの良さが失われてしまうと思います。もし本当に国語の問題集として使いたいのでしたら、私は高校レベルですとPS※を導入するか、あるいはシステム現代文の方が良いと思うんです。

OSはやはり中学校や中高一貫校、あるいは小学校での導入がいいのでしょう。本校みたいに高校からOSだけをやるというようなやり方は、なかなか現場の先生たちのコンセンサスは取れないでしょうね。

かといってOSからPSまで一気に高校3年間でやろうと思うと、これはかなりのボリュームになるので、生徒に丸投げしてしまう部分が多くなってしまう。たぶんOSの1から3ぐらいまでは、「これちょっと自分たちでやっておけよ」みたいな感じで自習させてしまったりするのではないでしょうか。

しかし、個人的には論理エンジンのOS1から3までは、論理エンジンのエッセンス中のエッセンスがおさまっているところなので、これこそ教員が時間をかけて教えなくてはならないと考えています。そこを見た目簡単だから丸投げしてしまうと、本当に高校生に小学生の国語問題集を与えているだけになってしまいます。

すると、子どもたちは自分でパッパッやっていっちゃって、「あ、間違えちゃった。でも大丈夫、大丈夫」と、一万円近い教材を使っているのに全く力にならないということになってしまう。

※過去に(株)水王舎で販売していた教材で、現在は「論理エンジン アプリシリーズ」として販売しております。

モチベーションを上げる工夫

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―― そうですね。論理エンジンの核ともいえるOSの始めのほうは、簡単な問題が多いので、生徒のモチベーションも上がりにくいかもしれません。指導の際のコツがあれば教えていただけないでしょうか。

加藤 私、高1の現代文では論理エンジンしかやっていないという話をしましたが、実際は、東大や早稲田の入試問題なども、レベルのテーマに合わせて部分的に取り出してはちょこちょこ使っているんです。入試問題は子どもたちに非常に取っつきが良いですね。

論理エンジンの簡単な論理、例えば対立関係を教える際、まず小学生レベルのあの問題を1時間とか2時間練習していきますよね。

次に、私は必ず子どもたちに入試問題を見せ、まずは子どもたちだけの力で解かせます。で、解かせますと子どもたちは従来型の解き方をします。こっちも使う問題は、子どもたちがまんまと引っ掛かる問題を選ばなくちゃいけません。

従来型の解き方をして引っかかった後に、実際に論理を使って、「ここの問題は、こういう風に簡単に解けるじゃない」と見せるのです。すると生徒たちは、「ああ、そういうことなのか」となる。

東大の記述問題ならば、あの枠の中に解答を収めなくてはいけないので、子どもたちに解答のパーツを本文中から引っ張り出させるわけですけれども、そのパーツの引っ張り方でも、なんとなく選ぶと違う言葉を選ぶだろう、というような問題を用意しておく。そして、「ほらこれが東大のパーツだよ」と、イコールの関係、対立関係という論理で解いてみせるのです。それを繰り返すんですね。

―― 論理エンジン研修会の質疑応答の中で、加藤先生が「赤い花がきれいに咲いた」という文章を使って、東大や慶應の入試問題と絡めてご説明されたことがありましたよね。そこに私たちは非常に感銘を受けたのですが、まさに生徒も同じことを思うのでしょうね。

今なぜここを学んでいるのか、その意味がはっきり目の前で分かるから、当然論理エンジンに対するモチベーションも上がる。

加藤 「東大や慶應の問題を使って、君たちにいま教えたような論理を教えると、文章の内容を理解することにだけ、うんと時間を費やしてしまうでしょう。だからそれは時間の無駄なんだ。だから、『論理エンジン』の易しい問題で考え方を学んだ上で、これを入試問題などに活かしてもらう。だから『論理エンジン』がなかったら、これは絶対に分かるようにならないんだよ」というその結びつきはもう毎時間のように言うんです。普通なら、こんな簡単な問題で「本当に大丈夫なのかな」って思ってしまいますからね。

使いこなすために一番大切なこと

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―― 先生のような指導を繰り返していくことで、入試問題に対する子どもたちの警戒心は大分なくなっていくでしょうね。そして、様々な文章にあたることにより、文章がどのように作られているかも頭に入ってきます。すると「ここでこの論理が使える、あれも使える」とさらに文章に取り組むことが面白くなってくるんですよね。

加藤 そうですね。そうすると自分で意図的に解けるようになってくる。今までなんとなく出来ていた問題が意図的に出来たという、この成功体験は非常に大きいんですね。

特に国語の場合には小中の頃からよく先生に「大事な所に線を引きながら読みなさい」と言われてくる。でも国語の苦手な子は、大事なところが分からないから国語が苦手なのです。

その大事なところというのは文章の内容によります。でもその内容が難しいから大事なところが分からないのか、といったらそうではない。論理で読んでいけば大事なところは必然的に分かってくるのです。だから文章が読めない子でもきちんと文章のポイントが抑えられるんだよ、というような体験をさせていってあげると、国語の苦手意識はうんと少なくなっていきますね。

―― 先生は、年に20ターンも論理エンジンの教材研究をなさっていると伺ったことがあります。さらに入試問題との絡みも常に研究されている。それだけの努力あってこそ、そういう的確な授業が出来るんですね。

加藤 そうですね。今までの経験の中から「あ、あの時の早稲田の問題にこんなのがあったな」とか分かる部分、そういうところですけれど、手を抜く所は手を抜きます。

―― 時間のない先生にとっては、ある意味、使いこなしにくい教材なのでしょうか。

加藤 教材研究にどれだけ時間をかけるかは人それぞれですから何とも言えませんが、論理エンジンは、それ自体の教材研究にはあまり時間はかからないと思います。「このレベルは、どのような論理・思考スキルの鍛錬のために用意されているのか」さえ的確につかめばいいだけですから。

そのうえで、論理エンジンとリンクさせる教材をどうセットするかということのほうに時間が必要だと思います。教師自身がどれだけ入試問題を解き、本を読んでいるかということにも大きく左右されますね。

次回(5)に続きます・・・

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