コラム

論理エンジン研修会の超人気先生~開智学園開智高等学校・加藤克巳先生~【前編】(1)「論理エンジンの理想郷」
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Writer S
開智学園
加藤克巳
シリーズ第1回

初夏、われわれ論理JP取材班はさいたま市にある、開智学園開智高等学校を訪問しました。もちろん、論理エンジン研修会の人気講師、同校S類の加藤克巳先生の授業を取材するためです。先生のご好意により、高2と高3、2つの授業見学の機会をご用意いただきました。それではさっそく”論理の匠”加藤先生の授業をのぞいてみましょう。

訪問するとそこに広がっていたのは

そこに広がっていたのは、論理エンジンの理想郷でした。

初夏、われわれ取材班はさいたま市にある、開智学園開智高等学校を訪問しました。もちろん、論理エンジン研修会の人気講師、同校S類の加藤克巳先生の授業を取材するためです。

先生のご好意により、高2と高3、2つの授業見学の機会をご用意いただきました。前者は論理エンジンのレベル27の授業、後者は論理エンジン方式で解く入試問題、いわば一通り学習した生徒に向けての実戦的授業です。

教室に入ると、大人の方がすでに座っていらっしゃいます。そう、加藤先生の授業すべてを、必ず誰か他の先生が見学しているのです。導入の旗振り役として論理エンジンを学校全体で取り組ませ、授業のすべてを論理的に変え、ついに東大合格者を輩出した加藤先生の試みの一端が見えます。

授業の始まったときから気づいていたのですが、なぜかここは生徒の雰囲気、いや、教室のかもし出す空間のにおいが違います。

そして、生徒への最初の発問で、我々はいきなり唖然とさせられたのです。

生徒の受け答えが違う

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いきなりですが、論理エンジン・レベル27ステップ4の「段落相互の関係(4)」において「第二段落の要点は何か」という加藤先生の質問に対する生徒の答えをそのまま掲載します。

段落相互の関係(4)

段落相互の関係(4)

この「第二段落の要点は何か」

加藤先生

加藤先生

生徒Aさん

生徒Aさん

一行目の「最近になると、私たちの季節感は、昔ほど細やかではなくなったようである」というところ。

はい、なぜそこだと思いました?

加藤先生

加藤先生

生徒Aさん

生徒Aさん

二段落目が始まる最初のところに、「しかし」という逆接があるので、「しかし」の直後の「最近になると、私たちの季節感は、昔ほど細やかではなくなったようである」にまず印をつけました。
次に、八行目の「小説などを」のところから、後ろから二行目の「~やはり何か足りないものがある」までを括弧でくくり、その中の「このことを私は必ずしも残念だと思っていない」にAダッシュをつけました。
そして括弧の中を見たとき、はじめはそれが全部具体例だと思ったんですけど、後ろから3行目の「このこと」は、九行目から十行目にかけての「人間の劇が中心となって、風景などをこまかく書かれるとかえって退屈するのが現代人である。」だと思ったので……。

生徒が文章上チェックすべきポイントを明示しながら、答えにいたるすべての思考過程、いわゆる筋道を明示しながら、理路整然と答えるスタイル。もちろん、この生徒一人だけでなく、すべての生徒が徹底しているのです。

「こんな雰囲気の授業があるなんて……」食い入るように見守る取材班。なぜ、このようなレスポンスが自然と展開されているのか、いかにして“論理の体現”を成し遂げたのか、その秘密を探るために。

驚くべき文章解析作業

加藤先生の授業はさらに続きます。

はい。なぜそこが要点でした?

加藤先生

加藤先生

生徒Bさん

生徒Bさん

まず、この話の話題は、私たちの季節感?
1行目と、2行目の「実にめぐまれている」までは、要点じゃないと考えて。

うん、なぜそこが要点じゃないと言えたの?

加藤先生

加藤先生

生徒Bさん

生徒Bさん

その後の、「北方」から、「微妙である」は、具体例だと考えたので、それを導く文章だと……。

images加藤先生のキーワードはズバリ、「なぜそう思った?」です。

幾度となく繰り返される、答えにいたる筋道を問う発問。そして、画一化されたマーキングによる図式化の徹底。これは読解というより、文章の解析作業と表現すべきかもしれません。

その“文章解析”の実例として、先ほどのレベル27ステップ4第二段落の要点についての加藤先生の解説を挙げますと……。

今回はおそらく、マークをつけるとすると、第二段落のてっぺんの「しかし」
『段落の頭にある逆接が超重要の法則』でいくと、この第二段落がポイントになるということは、もう明らかなわけです。で、○○(生徒Aさん)が指摘したように、「しかし」の直後の一文というのは、これは要注意でマークするわけだ。

加藤先生

加藤先生

その後、第二段2行目の「小説などを~」。ここから丸括弧が付いていって、「丸括弧の終わりはどこまでかな」という感覚で読み進めていくと、後ろから3行目、真中に「このこと」という指示語があるので、その指示語の前までで基本的にはまず一段落だな、ここで一回丸括弧は多分閉じておくわけだ。

で、その内容を、「このこと」という指示語が引きずる。ということは、ここは基本的にイコールの関係で結ばれるはずだ。

加藤先生

加藤先生

そして、後ろから2行目の上の方に「しかし」があるので、これも多分逆接マークがついたでしょう。そうすると、「しかし」の前後で「AしかしB」の形だから、この「しかし」の後が大事なのかな?という風に考えてしまうのだけれども、さっき○○(生徒)が説明してくれたように、ここのところは実はでっかい具体例の中での比較にすぎないわけだから、そこを要点としてとる必要はないんだ。

このように考えれば、「最近になると、私たちの季節感は、昔ほどこまやかではなくなったようである。」が要点であるととれるわけだな。

加藤先生

加藤先生

日本語のルール「論理」に基づき、マーキングと図式化という第一次的処理を画一的に行わせ、文章の目の付け所が浮かび上がるようにする授業。フィーリングではなく、根拠を押さえながら、読み飛ばすことなくしっかり読めるための工夫。感覚でもセンスでもなく、まさに数学の公式のように論理を当てはめていく、まさに加藤流の“文章解析作業”……これで生徒の読解力が上がらないわけがありません。

そして実際、加藤先生は教科書で指導せず、論理エンジン一本で開智高校S類を、一流大合格者を輩出するトップクラスにのし上げ、いまや多くの先生が見学に来るような授業を展開されているのです。

次回(2)に続きます・・・

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